大判例

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高松高等裁判所 昭和34年(う)66号 判決

判決理由〔抄録〕

果して被告人の本件バスの運行につき過失があったかどうかにつき判断するに、被告人は、宣伝用四輪自動車が道路前方右側に停車しており、門脇が道路前方豊田彰方の門前に横たわっていることを認めたので、バスを進めるためにその間隔を目測しており、かつ時速五粁の速さで徐行したこと及び車掌の左オーライの合図に従いながら進行したことは、前記認定のとおりであるから、本件バスの運行につき一応の注意を払ったものというべきである。

しかしながら、およそ大型の自動車を運転する者は、小型自動車を運転する者に比しより以上に道路の広狭、道路上に障碍物が存するか否か等、特段の注意を払い交通の安全を図るべき業務上の注意義務があると解すべきところ、本件についてこれをみるに、被告人の運転していた本件バスは、前記説示のように四〇人乗りの乗合自動車であり、しかもその後輪はいわゆるダブルタイヤであるから、障碍物のない広い道路を進行する場合ならばともかく、前記のように停車中の宣伝用四輪自動車と道路上に足先を投出して横たわっている門脇との間のように間隔の十分にない狭い場所を通り抜ける本件のような場合には、単に右両障碍物間の間隔を目測し、徐行し、もしくは宣伝用四輪自動車との離合に注意するだけでなく、車の左側面にも十分注意を払うべきであって、前記のように本件バスの構造上操縦席からは車の左側面は注視できないのであるから、車掌石田美智江に特に門脇を注視するよう命じて、その前輪のみならず後輪も無事門脇の傍を通り抜けられるかどうかにつき深甚な注意をなしその危険のあるときは直ちに停車の措置をとり得るよう危険の発生を未然に防止する手段を講じなければならない業務上の注意義務のあることは当然のことである。しかのみならず、前記説示のように被告人は門脇が被告人の運転するバスの通過を知らない様子で横たわっていたことを察知していたのであるから、このような場合には横たわっている者が何時如何なる行動をするか予測し難いため、道路上に足を投げ出して寝ている門脇にバスの通過を知らせ足を引き込ませる等して安全圏内に避譲せしめるか、もしくは場合により被告人自ら下車し、または車掌石田美智江をして下車の上門脇を安全な場所に退避せしめるか、或いは交通の妨害となっている停車中の宣伝用四輪自動車を移動させる等の手段を講じ、危険のないことを十分確認した後進行を開始することが乗合自動車を運転する被告人の本件の如き場合において特にとるべき注意義務であるというべきである。

しかるに、被告人は、前記のような危険防止についての適切な措置を執らず、単に、障碍物間の間隔を目測し自己の運転するバスと、大体同じ大きさの前記普通貨物自動車が通過したのだから自己も通過できるものと考え、徐行し、車掌石田美智江の左オーライの合図に従っただけで、道路の左側に寄り過ぎて進行したことの証拠上明らかな本件においては、被告人は乗合自動車の運転者としてとるべき業務上の注意義務を尽さなかったものといわざるを得ない。なお、被害者門脇がてんかん発作により道路上に足を投げ出して横たわっていたことは、被害者にも過失があったというべきであるが、被害者に過失があったからといって直ちに被告人の責任を阻却しないこともとよりである。

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